米下院の従軍慰安婦決議に対抗して東京裁判の再審を、

 米下院のいわゆる従軍慰安婦問題に関する非難決議だが、日本の有識者たちが米国の有力紙に掲載した意見広告が、かえって反感を買って、逆効果だったようだ。むしろおとなしく頭を下げて台風の行過ぎるのを待とうという意見が主流になりそうな雲行きなんだが、わたしは、それはちがうと思う。
 そこがアメリカ人と日本人の民族性のちがい、お国柄のちがいではあろうが、だからといってここは、日本人の謙譲の美徳で解決する問題ではない。自由な民主主義と呼ぶ、政治理念を共有する同盟国として、むしろオープンな議論をして、一致できるところと、一致できない相違点をさらけ出すことによって、より相互理解を深めることが重要だ。アメリカが提唱して、日本が共感するグローバルスタンダードの部分と、双方の、あるいは二国のみならず第三国や国際社会からの同感と異論に謙虚に耳をかたむけたり、発言するよい機会だと思う。
 ここの部分が、すでにおこなわれている支那や朝鮮相手の歴史論議とはちがう。政治体制や民族性のちがいが原因で、相互理解が得られない不毛の対話とはちがって、アメリカとの対話は成果が期待できる。日本人自身が結論を得ることができない、なぜあんな戦争に突き進んでしまったのか。本当の戦争原因はなんだったのか。開戦責任はだれにあるのか。敗戦処理はあれでよかったのか、不充分や行き過ぎがあるのではないのか。この経験をその後の歴史認識の共有や平和構築にどう生かすのかの議論を、国内の閉鎖的な言語空間ではなく、国際社会に公開した場所で議論する意義はある。東京裁判は、一方的な勝者の報復裁判で終わってしまったわけだが、それはそれとして、当時の状況としては仕方がなかった…オットこれは禁句で防衛大臣の辞職原因になってしまうが、現代人の視点からあの東京裁判やアメリカの占領政策がもたらした日本への民主主義の強制までをふくめた、広範な議論を巻き起こすきっかけになれば、たいへんいいことだとおもう。
 もちろんそれは、アメリカ人の一部グループは真珠湾攻撃から話しはじめたいだろうし、特定アジアや一部の日本人は東京裁判とおなじ昭和初年から話しはじめたいだろう。どこから話しはじめるのかで、発言者の結論が推測できるのが、この議論の特徴だ。そこにも条件をつけずに、自由な議論を許して、思う存分に討論しあえばいい。わたしは、アヘン戦争から話しはじめて、イラク戦争まで、一貫した日本の立場があると考えている。
 それはつまり、日英同盟にはじまるアングロサクソンと日本人の提携が人類史にあたえた影響力や、平和構築の努力の肯定であって、一時的に敵対した太平洋戦争を過大評価して、ゆがんだイメージを補正するものでもある。この議論は日米の二国間関係を、現世利益的な目先の同盟関係ではなく、人類史に貢献するような理念の共有を目指して、自由な民主主義の可能性を無限に広げるものになるだろうと思う。
 従軍慰安婦と誤称されるマイナーな話題ではじまった論争が、人類の平和構築の共通認識にまで昇華された議論になることを望むしだいだ。

この記事へのコメント

  • 練馬のんべ

    TB有り難うございます。
    阿片からイラクまでとは考えもしませんでしたが、なるほどそういう切り口での総括も大いに有力。
    マイクホンダ君、すぐにシナの差し金であることを白状しましたね。笑えました。
    2007年08月04日 09:00
  • ナルト

    こんにちは。TBありがとうございました。
    おっしゃるように、もう一度東京裁判の総括が必要でしょうね。
    多くの日本人は、戦後まもなく、4000万件の日本人の署名とともに国内法上「戦犯」がいなくなったことを知りません。
    バカ・マスコミも安易に「戦犯」を喧伝するし、政治家にも平気で「戦犯」が存在するかの如く発言する者もいます。
    戦後、ゼロ、いやマイナスからからスタートして現在の日本を築いた身近な人々4000万人の署名の重さを今一度世に知らしめるべきです。
    2007年08月04日 12:17
  • 罵愚

     アメリカと喧嘩をしようとか、いがみ合おうと言うんじゃぁないわけです。宗教的迫害をうけたピューリタンによる建国神話が示すように、かれらの国家理念だって自由な民主主義とか、人権思想が中核にはあるし、それは市民革命を経験したヨーロッパの民主主義勢力も共通しているわけです。かれら欧米の民主主義と日本の近代史は理念を共有している。非白人国家のなかで、唯一かれらと理念を共有して近代化に成功した日本がおかした失敗の原因や実態を話しあう、その議論をとおして相互理解がはかれると思います。
    2007年08月04日 17:45
  • 三四郎

    TBありがとうございました。

    >どこから話しはじめるのかで、発言者の結論が推測できるのが、この議論の特徴だ

    なるほどと思いました。前提条件なしに広い視野で議論をすることはとても有益だと感じました。阿片戦争から日本の立場が一貫してあるということ、同感です。歴史の一部を切り取って立場立場で都合よく結論を導くばかりでは相互理解などありえませんね。
    2007年08月04日 19:17
  • 罵愚

    三四郎さん、
     ご理解ありがとうございます。近代の日本外交に一貫した基本理念があるように、アメリカの建国以来の外交にも一貫したものがあります。じつは、そこがこのふたつの国の特殊な性質でして、ほとんどの国家には、それがありません。外交は理念よりも、目のまえの現実…パワーバランスによって変転する国が多いのに対して、日米だけは理念的な外交を展開する特殊な国だと思います。
     したがってその同盟関係は、理念を共有しているかぎり、環境の変化に抵抗して信頼性が長持ちする特徴がある。日英同盟と、日米同盟の質的なちがいだと思います。
    2007年08月05日 04:16
  • いとぐるま

    TBありがとうございました。
    今後は、拝読しながら、勉強させていただきます。流れの中で歴史をとらえることは、大切なことですね。そのとおりとおもいます。戦後日本は自国の歴史に無関心すぎました。世界を視野に東京裁判までの近代史を見直さないと精神の拠り所をうしないかねませんね。http://chacham.iza.ne.jp/blog/
    2007年08月06日 09:52
  • damedakorea

    遅くなりましたがTBありがとうございました。もうすぐ終戦記念日です。この際、未だに言われる東京裁判を総括し直す事は今後の為にもなりますね。
    2007年08月08日 13:04
  • 罵愚

     反米・反日のキャンペーン目的の8月15日から、この国は卒業できるんでしょうかね?むしろ、かれらをギロチンにして、もういちど独立しなおす必要があるのかも…
    2007年08月09日 03:46

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