あなたもA級戦犯ではないのか?

A級戦犯の敗戦責任」について
 戦争責任が、それを指導した一部の指導者にあるのか、それとも一億総ざんげの必要があるのかも、結論が出ていない論点だと思う。ふたつの事実を書いておくが、ひとつはドイツとの比較だ。ドイツでは、ナチスと国民を二分して、責任のすべてをナチスにかぶせて、ドイツ人は周辺被害国とおなじ被害者だと規定して敗戦処理を終わっている。周辺国の国民感情が、それを素直に了解したとは思えないが、ドイツを分割占領統治した連合国軍の占領政策としては、ほかの選択肢はなかったのだろう。第一次大戦の戦後処理の失敗も、影響をあたえたのかもしれない。いずれにしても、責任はナチス、ドイツ国民は被害者のタテマエは、ドイツでは定着して、終わっている議論だと思う。
 ところが、東京裁判ではまったくおなじ論理を日本に適用して失敗している。極東裁判所条例がニュールンベルグのそれのコピーだった事実からもわかるとおり、当初アメリカをはじめとする連合国は、おなじ国家犯罪の構造を日本にも想定していた。ナチスが犯した最大の国家犯罪としての人道犯罪は、日本では完全に否定されつくしている。平和にたいする罪の共同謀議も立証できなかった。そして、加害者としての指導者と被害者としての国民の二分法は、日本では失敗しているのだ。
 ふたつめには、それにもかかわらず、国連を中心とした戦後の国際社会や日本の外交は、そのフィクションを前提にしてなりたっている部分が多分に存在する。もっとも極端にそれがあらわれているのが中国と南北両朝鮮の対日外交で、かの三国はつねに善良な日本人民と悪逆な支配政権に二分した論法で、対日外交を展開する。それはかならずしも、かれらの外交政策としてだけではなくて、そのフィクションがはずれてしまうと、かれらの政権の正当性が消えてしまうのが、最大の理由でもある。政権の国民に対する統治権の正統性が消滅してしまうのだ。つまり、外交政策ではなくて、国内の統治権の問題なんだろう。
 大小の差はあるものの、おなじことは、連合国すべてにも、あるいは国際連合に対しても言えることであって、国連の常任理事国のすべてに対していえることだが、第二次大戦におけるかれらの勝利の意義が、全体主義に対する民主主義の勝利のフィクションが崩れて、たとえば、アジアにおいては植民地解放戦争を封じ込めた植民地列強の勝利だったとなれば、いまの国際社会は滅亡するのだ。
 どちらが、歴史を正確に描写しているのかの議論が、はじまらない理由なんだろう。

この記事へのコメント

  • しばまさ

    TBありがとうございました。勉強になりました。こちらもTBさせて頂きましたが、前の記事と同じですみません。いずれ新しい記事を書く予定です。
    2006年08月14日 16:20
  • 罵愚

     ぜひ書いて、わたしのブログにTBしてください。
    2006年08月15日 17:23
  • 民主主義者

     罵愚さんは、その記事から察するに東京裁判を否認するように見えるが、なぜ東京裁判の概念である「A級戦犯」という言葉を乱発するのかが理解できない。重大な矛盾だと思うが、如何。
    2006年08月16日 19:52
  • 罵愚

    民主主義者さん、
     従軍慰安婦も天皇制も、左翼の造語、あるいは多用語だった。あたまに“いわゆる”をつけるのを強制した右翼もいた。しかし、語源を知りさえすれば、むしろ回りくどい説明が省ける。わたしがよく使う「戦後民主主義」だって、もとをただせば左翼が自分に向けた尊称だった。戦後民主主義者を自称して、いばっていた文化人は、すくなくない。いまでは、むしろ差別用語として注意をうけかねない。
     不穏当を承知で書かせていただければ、敵性言語も定着すれば常用語になる。あなたのご指摘は、言葉遊びにすぎない。
    2006年08月17日 05:24
  • 民主主義者

     逃げるな罵愚さん。A級戦犯という概念を使っている以上、あなたの主張はすべてまやかしに過ぎない。冷戦崩壊後、未だに「右翼」・「左翼」を説明も条件もなしに使っている。以前も指摘したが、あなたは、狭義の冷戦期の思考法を脱却できていない。全体主義も使用しているが、これまた反共主義の概念である。
    2006年08月17日 21:10
  • 罵愚

     東京裁判を否定するから、裁判で規定された言葉を使ってはいけない、という強迫観念に疑問を感じる。
    2006年08月18日 04:50
  • 民主主義者

     結局、「東京裁判史観」(私の主張を繰り返すが、特定の裁判に立脚した史観はない。これはあなたの言葉である。)に拘泥せざるを得ない罵愚さんの15年戦争観が露呈しているのである。自家撞着である。戦争の総括をあなたにすれば、あなたの主張に全面的に対抗できるのだが。
    2006年08月18日 10:09
  • 罵愚

     戦争の総括なら何回も書いている「自存自衛の防衛戦争とアジア解放の干渉戦争の二重構造」だと思う。
    2006年08月18日 16:51
  • 民主主義者

     それなら、なぜ「A級戦犯」という概念を用いるのか。まともに答えられないのか。先入観から自らを解放してみるために意図的に「A級戦犯」という概念を用いているのか。あなたの文章を見る限りご都合主義に用いている。ところで、どこかの記事で、私との対話であなたも日中戦争が日本の侵略戦争であったことを「なんとなく」認めているようだが…では、「自衛戦争」が当時の日本政府の国内外に対するプロパガンダであったことをどう見るのか。歴史が当時の歴史主体(個人・国家・体制・制度その他)の代弁ではないことは重々承知と思う。「アジア解放の干渉戦争」の意味がわからない。アジアを解放するのは誰、あるいは何、アジア解放に干渉するのは誰、あるいは、何か。
    2006年08月18日 19:42
  • 罵愚

     裁判の正当性を認めようが、認めまいが、裁判そのものの実在は歴史的事実だ。そこで使われた用語を借用することが、判決の正当性を容認することにはならない。
     アジア解放がプロパガンダだったのは事実だ。しかし、そのプロパガンダのもとの実績も、これもまた事実だ。
    2006年08月19日 05:03
  • 民主主義者

    「A級戦犯」の概念は東京裁判の根幹をなす。「A級戦犯」という言葉を使って15年戦争を論じている以上、東京裁判を認めているのだ。論理とは厳しいものである。詭弁を弄せず、まともに私の質問に答えてみよ。さらに、解放を言うのなら、ヴェトナムの解放について説明してみよ。
    2006年08月19日 06:56
  • 罵愚

     「A級戦犯」はレス文中にあなたが使いはじめたもので、この記事中には使われていませんよ。さらに、TBもとの記事でさえも、表題に使ったもので、本文中には使われいません。
     本論とかけ離れた議論を楽しんでいるのは、あなたの一人相撲だよ。
    2006年08月19日 15:01
  • 民主主義者

     ここの記事で極東国際軍事裁判(「A級戦犯」の裁判)に言及しているのはあなただ。「東京裁判史観」という、イデオロギー標語を用いているのもあなただ。私のコメントに乗ってきたのもあなただ。自衛戦争・アジア解放戦争の評価を下しているあなたは、論理的必然として同裁判を論じられない。否定する以上、あなたの主張、すなわち、15年戦争を自衛戦争・アジア解放戦争として明確に示すべきなのだ。しかし、他方で、自衛戦争に対しては、あなたは侵略戦争であったと認めはじめているようだから、あなたなりに15年戦争を一から見なおしはじめたのだ。次は、解放戦争を見なおすことが課題になる。日本が占領したヴェトナムの解放を論じてみよ。
    2006年08月19日 20:37
  • 罵愚

     これ以上はくりかえしになるが、わたしが東京裁判を批判する立場にたつからという理由で、A級裁判の言葉の使用を禁止されるいわれはない。あなたの論理が、おかしいと思う。
     小泉内閣の政策を支持しない国民は、小泉首相と呼んではいけないのか?郵政改革に反対する国民は優勢改革法案と呼んではいけないのか?
    2006年08月20日 05:20
  • 民主主義者

     また、論理を飛躍させる。東京裁判やその条例、訴因について、疑念を呈しているのはあなただ。あなたは、戦争違法化の流れを基礎から見なおしたいのだろう。だから、私は「「A級戦犯」という「概念」を用いないで15年戦争を説明してみよ」と言っている。私は、あなたの主張に即して言っているにすぎない。15年戦争は、誰をまたは何を解放したのか。
    2006年08月20日 07:18
  • 罵愚

     「戦争違法化の流れを基礎から見なおしたい」なんて、どこから引っ張り出してきたのか?
    2006年08月20日 14:52
  • 民主主義者

     イデオロギー的標語で歴史を論じるから自家撞着を来す。私の指摘に正面から答えられないではないか。まじめに戦争違法化の歴史を勉強してみるとよい。そして、何度も問うが、日本は15年戦争において誰をまたは何を解放したのか。戦争責任の議論にも発展するのだから。
    2006年08月20日 17:22
  • 罵愚

     わたしの質問には答えないで、話題をすり変えているのは、あなただと思うけどなぁ。戦争違法化の歴史なんて、書籍にしても一冊では書ききれない。コメントで答えられるものなら、あなたがやって見せてください。
    2006年08月21日 05:39
  • 民主主義者

     あなたは、すでに逃げ口上をたれるのみとなった。残念である。再三再四問う。解放戦争であることを説明してみよ。
     戦争の違法化と言えば、やはりカントを思い出す(カントといえば、罵愚さん得意の表現たる「○○ではない。」にとどまる命題提示を無限用法と指摘していたこともあった。)。カントは『永遠の平和のために』において国際連合(ないし平和連合)と世界市民法の確立による世界平和を論じた。彼によれば、平和の第一原則は国家の公民体制が共和的でなければならないことであった。非共和的ならば、国民は元首の所有物になり、些細な理由で戦争を決心し、戦争の原因を外交や外国の所為にするからである。18世紀末の著作であるが、20世紀、否、今世紀に通じる論考である。
    2006年08月21日 21:13
  • 罵愚

     本題を離れて話題をコロコロ変えているのは、あなただと思うけどなぁ。解放戦争も戦争違法化も、元記事とはなんの関連がない話題だ。オーナとしては、罵倒を放置しておくわけにもいかないのだが、解放戦争は開戦の詔勅にも書かれているし、大東亜会議でも、うたわれている。
     戦争違法化に関してはたくさんの書籍があって、日本では藤田久一が第一人者だと思うが、カントが飛び出してくるとは思わなかった。わたしは読んだ経験はないし、その誘惑も感じないが、18世紀の地球連邦の夢がいまも有効とは思わないし、共和制が万能とも思わない。
    2006年08月22日 03:37
  • 民主主義者

     また、歴史を安直に捉える。開戦の詔勅に書かれているから解放戦争だと言うのは、話にならない。大東亜共同宣言も日本の収奪をごまかす言説である。日本の占領地域の歴史の実際に照らして解放戦争であったことを示してみよ。私は、繰り返すが、あなたの主張に即して話している。言い訳は無用である。
    2006年08月27日 18:59
  • 罵愚

     開戦理由と戦争目的のなかに近隣開放があった事実は、書き残されているのだから、否定しようがない。軍歌のなかにも「東洋平和のためならば」とうたわれている。
     因果関係は証明しようがないが、戦後この地域は全部独立を達成し終えているのも事実だ。
    その事実を「話にならない」「ごまかし」と否定するのなら、なにを証明すればいいのか?
     メクラに信号機の三色を教えることはできない。
    2006年08月28日 03:56
  • 民主主義者

    だから、東アジア・東南アジア地域をどう解放したのかを説明できるかといっている。当時の日本政府や軍歌を鸚鵡返ししているだけでは話にならない。
    2006年08月29日 20:30
  • 罵愚

     東南アジア各国の独立運動に大東亜戦争がどういう影響をあたえたのかを、あなたは知らない、ということですか?調べたこともなければ、教えてもらったこともないのですか?
    2006年08月30日 04:56
  • 民主主義者

    では、ヴェトナムから行く。どうぞ、解放について論じてみよ。
    2006年09月02日 19:12
  • 罵愚

     メクラに信号機の三色を教えることはできない。
    2006年09月04日 08:50
  • 民主主義者

    「メクラ」とは何か。ところで、南方開発金庫の通貨政策をどう考えるか。
    2006年09月04日 20:39
  • 罵愚

     顕微鏡でのぞいた画像を全体像に拡大したような議論はしない。
    2006年09月07日 03:01
  • 民主主義者

    南方開発金庫は占領期の東南アジアを論じるときには言及される。私は当然の事柄を言及しているまでのこと。あなたは、イデオロギー的標語の組み合わせで歴史を論じるから私のコメントに対し「顕微鏡云々」などとしか言えないのだ。
    2006年09月09日 15:18
  • 罵愚

     満鉄や南方開発をイギリスやオランダの東インド会社に見立てた説明だろうがね、植民地支配の役割分担としては同質だったからといって、その支配までもが同質だという結論にはならない。
    2006年09月10日 03:59
  • 民主主義者

    東インド会社と南方開発公庫とはまったく性格が違う。よく勉強するとよい。
    2006年09月10日 19:51
  • 罵愚

     収奪と開発のちがいですか?
    2006年09月11日 17:13

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